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カテゴリー「drrr」の記事一覧
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※新羅と臨也


「それだけは本当に理解できないね。」
折原臨也はそう言って腕を組んだ。目は剣呑に細められ、近づけられた眉と眉の間にはわずかに皺が寄っている。肌で感じられるほどささくれだった声で放たれたその言葉は彼の前方へ、射抜くような眼光とともに真っ直ぐと前へと投げかけられた。
視線の先には彼の友人である男がいた。彼の目の前の人物、岸谷新羅はなにをそんなに臨也が怒っているのか心底わからないといった表情をして、不思議そうに首を傾げている。二人それぞれの目の前に置かれたコーヒーカップの中身は温度を失って、今は静かに時が流れるのを待つばかりだった。二人の間に、午後の空気よりもずっと重い沈黙が流れる。

午後二時過ぎのカフェテリアにはほとんど人はいなかった。ほんの数十分前に臨也と新羅は連れだってやってきて、ここに向かい合って座った。特に何か用事があったわけではない。ただいつも通りの雑談。それは日常の些細な出来事を聞くためではなく、単に言葉を交換することでお互いの空間を共有するためだけの、彼らにとっては非常に大切な時間だ。そこに取り決めは無いし、いつだって約束もせず、ふとどちらかが「彼に会いたいな」と思ったときにだけ二人はこうして会うのだった。それは彼ら二人にとって、何でもない、ちょっとした一時なのである。

その話題が机上に登ったのもそんな戯れの最中だった。
「俺は自分に人並みの常識があるって思ってるからこれは言うんだけどさ、それは無いと思うよ。」
臨也の言い回しは遠回りで嫌みだったが、新羅には彼の言わんとすることがわかったようだった。新羅はゆっくりとした動作でテーブルに頬杖をつくと、話の続きを促すように前へと視線を送る。臨也は小さく頭を振った。

「君に常識が無いとかそういう話をしたいんじゃないんだ。ただ、そうだな、君のセンスのことなんだよ、新羅。」
組んだ腕を解いて、臨也は新羅と同じように頬杖をつく。顔の距離が近くなって、新羅はふと目の前の男の鼻をつまんでやりたいという無意味な衝動に駆られたが、彼の友人は話の腰を折られることをあまり好んでいないので、指先はカップの方へ持っていくことにした。
臨也はしばらくの間言葉を選ぶのに頭を捻っていたようだったが、不意に小さく息を吐いて、その細長い指で新羅の鼻を摘んだ。まさか自分と同じことを考えていただなんて。目を白黒させる新羅を見て臨也は少し笑った。

「俺が言いたいのはさ、日常生活で使うには、白衣はあんまり見た目的にいいもんじゃないってこと。」


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時々臨也は泣く。
それは例えば並んでテレビを見ているときだったり、風呂上がりに髪を乾かしてやっているときだったり、また眠っているときだったり、実にとりとめのない二人の日常のある瞬間に訪れるのだ。
どうかしたかと俺は決まって訊くのだけれど、当の本人は言われるまで自らが涙を流していることにさえ気付いていない。俺が少し眉を寄せて、こいつの代わりに表情を変えたのを見て初めて臨也は自分の状態に気付くのだった。

「なんでもないんだ。」
こんな時こいつの返答はいつだってそっけない。いつもは黙れと言ったって次から次へとわいてくる屁理屈も軽口もどこへやってしまったのだろう。
臨也は大抵一言だけそう口にするとその後は口を閉ざして涙が収まるまでおとなしくしているのだ。
止めどなく流れてくる涙を拭うこともなく、ただそれが通り過ぎていくのを静かに待っている。はじめは一滴だった涙は段々と量を増し、生み出された一筋はいつの間にか頬全体を濡らしていた。その時の男の顔は、まるで作り物みたいで触れることをいつもためらってしまう。臨也が泣くのは俺が隣にいるときだけだからそれはきっと触れていいものなのだろうけど、心のどこか一部で、ずっとこのまま見ていたいという気持ちがあるのも事実だ。口に出すとこいつは怒るだろうが、この泣き顔が俺は嫌いではない。
俺以外の誰にも見せない、ひどく無防備なこの表情で満たされる部分が確かに俺の中にあるのだ。

「どうして出てくるんだろうね。」
涙が止まった後、臨也はよく不思議そうにそう言う。
「俺がいるからじゃねえの」と言ってしまいたい衝動に駆られるが、いつかこいつ自信が気付くまで俺は黙っておこうと思う。


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「おかえり。」
「ただいま。ああ、もう、散々だ。」
頭の先から革靴の中までびしょびしょに濡れた同居人は、そう言って不機嫌そうにゆるく首を振った。髪の先から垂れる水滴を、こいつがきっと濡れて帰ってくるだろうと予想して用意して置いたタオルで拭き取ってやると、文句は「雑だ」という一言だけで臨也はそのままじっと俺のなすがままにされていた。タオルの中だと痩せた身体が余計小さく見える。頭をあらかた拭き終わってから臨也の肩にタオルを引っかけてそれごと抱き込むと、じんわりと体温が伝わってくるのがわかった。

「濡れるよ。」
「ちょっと痩せたかお前。」
「一週間やそこらで変わらないだろ。いい加減着替えたいから離してよ。」
「もうちょっと。」
「仕方ないなぁ、君ってやつは。」
馬鹿だなと言いながらも俺の背に回された臨也の手は優しい。こいつがいなきゃいけないなんて考えることなんてなかったのに、いつからか無意識下にそれが焼き付いてしまって離れない。こいつと同居し始めて数ヶ月、気付かないうちに変わってしまった部分はいくつあるだろう。

苦情の声も聞かないで臨也の身体をそのまま持ち上げて風呂場へ向かう。
「やっぱり痩せたって。」
「君、俺の体重まで把握してるの。」
「当たり前だろ。お前は俺のだ。」
「君のそういうとこが嫌いだよ。」
「俺は好きだけどな。」
「うるさい。というか、変わってたところでせいぜい一キロぐらいのものじゃないか。気にするほどじゃない。」
「お前は俺のもんだって言っただろ。一キロだって減らしたくねえんだよ。」
「横暴だね。」
「褒め言葉だ。」
臨也は喉を鳴らして小さく笑う。臨也の濡れた指が俺の頬に触れてゆっくりと撫でていったと思ったら、次の瞬間にはそこに唇があてがわれていた。柔らかい感覚に息を止めた俺を見て、頬を赤くしたのは臨也の方だ。

「君がそんなに俺のことを好きだなんて知らなかったよ。」
それはひどく満足そうな声だった。

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※蟲/師パロの設定、シズイザ

「元々俺は蟲を寄せやすい体質でね。」
男はそう言いながら煙草に火を点ける。マッチを擦る指先を、俺はどこか遠くにあるように思いながら眺めていた。
薄暗い部屋にほのかな灯りが揺らめく。白い煙が部屋を満たすにつれて、先ほどまで騒いでいた蟲たちは口を閉ざしていった。
壁を這いずり回っていた最後の一匹が部屋から逃れていくのを見てから、俺は視線を目の前に座る蟲師の方へと戻した。臨也は手提げ鞄の中からいくつかの物品を取り出して検分している。ひとつは刃物のようだ。それは何だと尋ねると「呪いの刀らしいよ」と臨也はいかにも面白がっているような口調で返した。
「だけれどもどうやら蟲関連のものじゃあないらしい。」
口元は笑ってはいるがひどく残念そうな声色である。俺は首を傾げた。

「どうして蟲じゃないってわかるんだ。」
怪異のあるところに蟲がいると言ったのはお前だろうと訊くと臨也は肩を竦めて笑う。
「ちょっと特殊な体質でね。言っただろ蟲を寄せやすいって。」
ここに蟲がいるならば全てそいつらは俺に向かってくるはずだ。臨也はそう言いながら自らの胸元を指した。
「俺のここには光酒というものが流れているんだ。」
「光酒?」
「ああ、生命の源、潮流みたいなものかな。人よりも蟲よりも、それよりもずっとずっと命というものの根元に近いものだよ。それが俺の身体には流れている。」
「お前、人じゃなかったか。」
「言っただろ、単なる体質さ。俺は人だよ。ただちょっと他の人間と違った環境に生まれて、違った血筋があったってだけのことさ。」
男の細い指が煙草を挟んで、それから側にあった皿に灰を落とした。思わず俺は臨也の手首を見る。白い肌、そしてその下に血管が透けている。そこには確かに血潮が流れているはずで、こいつが近づくと確かに蟲たちがえらく騒ぐという事実があるのに、俺にはさっき臨也が言った言葉が信じられずにいた。
臨也はもう一度煙草をくわえ、ゆっくりと煙を吸い込み、そして吐き出してから話を続ける。

「俺は他の人間と変わらないけれども、それでもきっとただの人間よりかずっと長く生きるよ。」
実は君と同じように俺も怪我をしたことがないんだ。そう言った臨也の目に俺が映っているのが見えた。

「でも君よりかは早く死ぬだろうね。ねえシズちゃん、そうなったらさ、俺が死んだらさ、」
何となく臨也の言わんとしたことを察して俺は首を振った。聞きたくない。それでも俺はこの言葉をいつか受け入れなければならなくなるだろう。それの辛さを知っていてこいつはそれを言うのだ。俺にはこの男が憎くてたまらない。俺を置いて先にいってしまうこいつを、俺はいつまでも追いかけなければならないのだ。

「君に俺の身体をあげる。」
君は嫌かもしれないけれど、そうしたらきっと俺がいなくたって君の力は安定するだろうから。臨也は笑っていた。

「俺が死んだら、いや俺が死んでも、」
思わずそこで臨也の腕を掴む。はっとした様子で赤い目が俺を見た。
俺は何も言えなかった。
それでもこいつに皆まで言わせてはならないとそれだけ思ったのだった。

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それはある休日のこと。天気の良すぎる真夏日のことだった。俺と臨也の休日が被るなんて滅多に無いことだから今日はどこかへ出掛けようかと朝方に言ったはいいものの余りの暑さに耐えかねて、クーラーの利いた部屋で二人してソファに沈むばかりの午後のことだった。
何も考えずにテレビを見ている俺の膝を枕に臨也は雑誌を読んでいる。たびたび向きを変えるものだから膝に当たる髪の毛がくすぐったい。お返しにその髪を指先で梳いてやると臨也は猫みたいに目を細めていた。テレビを消すとページをめくる音だけが聞こえるほど穏やかな日だ。
臨也が雑誌を脇に放り投げたのを合図にその頬に手を滑らせると、同じように臨也も俺の頬を撫でた。お互い何も言わずにじっと目だけを見つめていた。
唇が目に付いたので俺が自分のを寄せてみようかと思った時、不意に臨也が口を開いた。

「君、髪の毛プリンになってるよ。」
いきなり言われたものだから、俺は一瞬何のことだかわからず目をあけたまま固まる。屈めかけた身体も動きようが無くなって中途半端な体勢のまま臨也の口元を見つめていた。
そんな俺を差し置いて臨也は素早く起き上がり「俺が染めてあげるよ」と歌でも口ずさむみたいに楽しそうに言った。髪なんて、と言おうかと思ったが俺の手にはまだ臨也のそれの感覚が残っていた。
「君の髪に触るのが好きなんだ」と臨也が先に口にした。


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