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無防備
時々臨也は泣く。
それは例えば並んでテレビを見ているときだったり、風呂上がりに髪を乾かしてやっているときだったり、また眠っているときだったり、実にとりとめのない二人の日常のある瞬間に訪れるのだ。
どうかしたかと俺は決まって訊くのだけれど、当の本人は言われるまで自らが涙を流していることにさえ気付いていない。俺が少し眉を寄せて、こいつの代わりに表情を変えたのを見て初めて臨也は自分の状態に気付くのだった。
「なんでもないんだ。」
こんな時こいつの返答はいつだってそっけない。いつもは黙れと言ったって次から次へとわいてくる屁理屈も軽口もどこへやってしまったのだろう。
臨也は大抵一言だけそう口にするとその後は口を閉ざして涙が収まるまでおとなしくしているのだ。
止めどなく流れてくる涙を拭うこともなく、ただそれが通り過ぎていくのを静かに待っている。はじめは一滴だった涙は段々と量を増し、生み出された一筋はいつの間にか頬全体を濡らしていた。その時の男の顔は、まるで作り物みたいで触れることをいつもためらってしまう。臨也が泣くのは俺が隣にいるときだけだからそれはきっと触れていいものなのだろうけど、心のどこか一部で、ずっとこのまま見ていたいという気持ちがあるのも事実だ。口に出すとこいつは怒るだろうが、この泣き顔が俺は嫌いではない。
俺以外の誰にも見せない、ひどく無防備なこの表情で満たされる部分が確かに俺の中にあるのだ。
「どうして出てくるんだろうね。」
涙が止まった後、臨也はよく不思議そうにそう言う。
「俺がいるからじゃねえの」と言ってしまいたい衝動に駆られるが、いつかこいつ自信が気付くまで俺は黙っておこうと思う。
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