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皆まで言うな
※蟲/師パロの設定、シズイザ
「元々俺は蟲を寄せやすい体質でね。」
男はそう言いながら煙草に火を点ける。マッチを擦る指先を、俺はどこか遠くにあるように思いながら眺めていた。
薄暗い部屋にほのかな灯りが揺らめく。白い煙が部屋を満たすにつれて、先ほどまで騒いでいた蟲たちは口を閉ざしていった。
壁を這いずり回っていた最後の一匹が部屋から逃れていくのを見てから、俺は視線を目の前に座る蟲師の方へと戻した。臨也は手提げ鞄の中からいくつかの物品を取り出して検分している。ひとつは刃物のようだ。それは何だと尋ねると「呪いの刀らしいよ」と臨也はいかにも面白がっているような口調で返した。
「だけれどもどうやら蟲関連のものじゃあないらしい。」
口元は笑ってはいるがひどく残念そうな声色である。俺は首を傾げた。
「どうして蟲じゃないってわかるんだ。」
怪異のあるところに蟲がいると言ったのはお前だろうと訊くと臨也は肩を竦めて笑う。
「ちょっと特殊な体質でね。言っただろ蟲を寄せやすいって。」
ここに蟲がいるならば全てそいつらは俺に向かってくるはずだ。臨也はそう言いながら自らの胸元を指した。
「俺のここには光酒というものが流れているんだ。」
「光酒?」
「ああ、生命の源、潮流みたいなものかな。人よりも蟲よりも、それよりもずっとずっと命というものの根元に近いものだよ。それが俺の身体には流れている。」
「お前、人じゃなかったか。」
「言っただろ、単なる体質さ。俺は人だよ。ただちょっと他の人間と違った環境に生まれて、違った血筋があったってだけのことさ。」
男の細い指が煙草を挟んで、それから側にあった皿に灰を落とした。思わず俺は臨也の手首を見る。白い肌、そしてその下に血管が透けている。そこには確かに血潮が流れているはずで、こいつが近づくと確かに蟲たちがえらく騒ぐという事実があるのに、俺にはさっき臨也が言った言葉が信じられずにいた。
臨也はもう一度煙草をくわえ、ゆっくりと煙を吸い込み、そして吐き出してから話を続ける。
「俺は他の人間と変わらないけれども、それでもきっとただの人間よりかずっと長く生きるよ。」
実は君と同じように俺も怪我をしたことがないんだ。そう言った臨也の目に俺が映っているのが見えた。
「でも君よりかは早く死ぬだろうね。ねえシズちゃん、そうなったらさ、俺が死んだらさ、」
何となく臨也の言わんとしたことを察して俺は首を振った。聞きたくない。それでも俺はこの言葉をいつか受け入れなければならなくなるだろう。それの辛さを知っていてこいつはそれを言うのだ。俺にはこの男が憎くてたまらない。俺を置いて先にいってしまうこいつを、俺はいつまでも追いかけなければならないのだ。
「君に俺の身体をあげる。」
君は嫌かもしれないけれど、そうしたらきっと俺がいなくたって君の力は安定するだろうから。臨也は笑っていた。
「俺が死んだら、いや俺が死んでも、」
思わずそこで臨也の腕を掴む。はっとした様子で赤い目が俺を見た。
俺は何も言えなかった。
それでもこいつに皆まで言わせてはならないとそれだけ思ったのだった。
「元々俺は蟲を寄せやすい体質でね。」
男はそう言いながら煙草に火を点ける。マッチを擦る指先を、俺はどこか遠くにあるように思いながら眺めていた。
薄暗い部屋にほのかな灯りが揺らめく。白い煙が部屋を満たすにつれて、先ほどまで騒いでいた蟲たちは口を閉ざしていった。
壁を這いずり回っていた最後の一匹が部屋から逃れていくのを見てから、俺は視線を目の前に座る蟲師の方へと戻した。臨也は手提げ鞄の中からいくつかの物品を取り出して検分している。ひとつは刃物のようだ。それは何だと尋ねると「呪いの刀らしいよ」と臨也はいかにも面白がっているような口調で返した。
「だけれどもどうやら蟲関連のものじゃあないらしい。」
口元は笑ってはいるがひどく残念そうな声色である。俺は首を傾げた。
「どうして蟲じゃないってわかるんだ。」
怪異のあるところに蟲がいると言ったのはお前だろうと訊くと臨也は肩を竦めて笑う。
「ちょっと特殊な体質でね。言っただろ蟲を寄せやすいって。」
ここに蟲がいるならば全てそいつらは俺に向かってくるはずだ。臨也はそう言いながら自らの胸元を指した。
「俺のここには光酒というものが流れているんだ。」
「光酒?」
「ああ、生命の源、潮流みたいなものかな。人よりも蟲よりも、それよりもずっとずっと命というものの根元に近いものだよ。それが俺の身体には流れている。」
「お前、人じゃなかったか。」
「言っただろ、単なる体質さ。俺は人だよ。ただちょっと他の人間と違った環境に生まれて、違った血筋があったってだけのことさ。」
男の細い指が煙草を挟んで、それから側にあった皿に灰を落とした。思わず俺は臨也の手首を見る。白い肌、そしてその下に血管が透けている。そこには確かに血潮が流れているはずで、こいつが近づくと確かに蟲たちがえらく騒ぐという事実があるのに、俺にはさっき臨也が言った言葉が信じられずにいた。
臨也はもう一度煙草をくわえ、ゆっくりと煙を吸い込み、そして吐き出してから話を続ける。
「俺は他の人間と変わらないけれども、それでもきっとただの人間よりかずっと長く生きるよ。」
実は君と同じように俺も怪我をしたことがないんだ。そう言った臨也の目に俺が映っているのが見えた。
「でも君よりかは早く死ぬだろうね。ねえシズちゃん、そうなったらさ、俺が死んだらさ、」
何となく臨也の言わんとしたことを察して俺は首を振った。聞きたくない。それでも俺はこの言葉をいつか受け入れなければならなくなるだろう。それの辛さを知っていてこいつはそれを言うのだ。俺にはこの男が憎くてたまらない。俺を置いて先にいってしまうこいつを、俺はいつまでも追いかけなければならないのだ。
「君に俺の身体をあげる。」
君は嫌かもしれないけれど、そうしたらきっと俺がいなくたって君の力は安定するだろうから。臨也は笑っていた。
「俺が死んだら、いや俺が死んでも、」
思わずそこで臨也の腕を掴む。はっとした様子で赤い目が俺を見た。
俺は何も言えなかった。
それでもこいつに皆まで言わせてはならないとそれだけ思ったのだった。
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