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BOX2
「福ちゃん、あれ見たァ」

会話は大抵唐突に始まる。

「あれ、」
「あのあれだヨ。部室の」
「ああ。左に」
「片付けといた」
「すまないな」
「いいって。そういや明日って」
「三時だ」
「わかった、ありがと。後で部屋行くわ」

「なぁ、何であれで伝わるんだと思う?」
新開は机に頬杖をついたままそう尋ねた。視線は質問を投げた東堂の方ではなく、まだ会話を続けている二人の方にある。それは単語と単語をそのまま繋げただけの、それでいて外からはどこで接合されているかわからないものだった。
東堂は新開の質問に「さぁな」と一言答えただけで、またすぐに意識を携帯電話の画面へと戻してしまう。つれないな、と新開が言ったのには返答しなかった。タッチパネルに触れる指先は忙しない。きっと彼がライバルだと言ってはばからない、あの派手な髪の男にラブコールを送っているのだろう。
談話室の中には彼ら四人しかいないと言うわけではないが、けれども何だか自分がひとりぼっちみたいな気分になって新開は小さく鼻を鳴らした。それに一瞬東堂が顔を上げるが、わずかに口元に笑みを浮かべたばかりで構ってくれるつもりはないらしい。荒北と福富はあんな調子だし、まったく友達甲斐のない奴らめと新開は首を振った。
しばらくの間新開は東堂が楽しげに小さな液晶を覗きこんでいるのを眺めていたが、再び荒北と福富の方へと目をやってちょっと目を細めた。

二人の会話は続く。
「だからこう、」
荒北が手を持ち上げて指でぐるりと円を描くような動作をする。
「外回りで行く方が」
「タイムロスだ。それなら東からの方がいい」
「それじゃあダメだろ。見えなきゃ意味ねえし」
「なら直線だ」
「アア、それが一番いいかなァ」
「おめさんらよ、さっきから何の話してんの?」
新開がそう口を挟むとようやく二人は彼の方を向いた。まるでそこに彼がいたのをすっかり忘れていたみたいな意外そうな表情を浮かべている。ひでえ、と心の中で新開が呟いたことは二人にはきっとわからないのだろう。
福富はちらりと荒北の方へと目を向けてから「大掃除の話だ」と腕を組んだまま言った。
「大掃除?」
「ああ、部活をやっている生徒で分担して――」
「いやそうじゃなくて…」
「何だ」
「お前等の会話の繋がりがわっかんねえよ」
一言だって「掃除」なんて単語出てこなかったじゃないか。そう新開が言うと、二人は顔を見合わせてそうだったかななんてとぼけたことを言っている。どうしてあれで伝わるんだ、と新開が疑問を投げかけても当人たちも首を傾げるばかりだ。

「考えるだけ無駄だぞ、隼人」
互いに不思議そうな目で相手を見やる三人を見て、東堂が笑いながらそう言う。
「こいつらはそれで完結してしまっているのだ。外から見たってわかりっこない」
二人だけに伝わる言語がそこにはある。
ことり、とそこで東堂が手に持っていた携帯電話を置いた。ああ、と新開が声を漏らしたのは、相手は違えど東堂もその「言語」を持っているのだと気付いたからだった。



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