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無意識なのだろう。
「やめろ。」
がり、がり、と断続的に音が続く。
「荒北。」
そう呼びかけても荒北は生返事で、福富の方を見さえしない。片方の手では雑誌をページを捲り、そうしてもう片手は口元へと運ばれている。ぎざぎざになった爪を揃えるようにひっきりなしに歯でそれを噛み切っている。そんなことをするよりやすりか何かを使った方がいいだろう、と福富が言ったって聞きやしない。
荒北のこの癖は彼が物心ついてからずっと持ってきたものなのだという。何気ないとき、たとえば片手が空いていて手持ちぶさたな時だとか、もしくは少しばかり口が寂しいとき、つまりはちょっとした暇があるときにそれはよく表れるらしい。
「爪でひっかいたりして痛いからやめようとは思うんだけどネェ。」
荒北はそう言って苦笑してみせるが、大抵その後しばらくすればその癖が始まってしまうから本当に「思うだけ」なのだろう。

「こら」
福富がそう言って彼の手を取ると、荒北ははっとした様子で福富の方を見た。いびつに尖った爪の先を見て福富が少しばかり眉を寄せる。荒北はちょっとだけ決まり悪そうな顔をするが、すぐに無意識だからサァと悪びれもしないような台詞を言ってみせた。
「仕方ない奴だな」
福富は呆れたようにそう言うが、しかしそれ以上荒北を責める気にならないのは、その癖が彼が本当にリラックスしているときにしか出ないものだと知っているからだ。
けれどその一方で福富は複雑な気持ちにもなるのだった。

(恋人が隣にいるんだから)
手が空いているなら俺の手を貸してやるのに。口が寂しいと言うならいくらでもその唇に噛みついてやるのに。
そう思えども福富が口に出来ないのは、それが彼にとっての癖なのだからだろう。


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