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黄色

※帝人(と臨也)


午後の光が目を刺して、僕は瞼を半分下ろす。わずかな温もりが薄い皮膚の上を滑っていく。目尻に滲んだ液体を指先で拭って再び目を開くとやはりそこにはさっきと同じ光景、代わり映えのない学校風景が広がっていた。
僕の席は窓際の後ろから二番目。昼過ぎになるとこの席には穏やかな風と午後の日差しを十分に受けることが出来る。今の時間の日の光は黄色くて、時折目を開けていられないくらい眩しい。それを理由にこじつけてたまにすっかり目を閉じて授業から逃げ出したりもするが、僕がこの光を好きなのはそれだけが理由じゃない。

あくびをかみ殺しながら視線を黒板の方へやると、いつの間にか文字で埋め尽くされていた。ああしまった、と思ったものの僕は焦ることもなく、またぼんやりと窓の向こうに視線を戻した。どうせ写したところで前の授業と似たような内容だし、所詮教科書をなぞっただけの内容だろう。同じことを何度も何度も続けることがすなわち日常なんだと、いつだったかある人に聞いたことがある。

「人間って言うのは希薄だろう。みんなみんな同じ生物なのに自分やアイデンティティなんて言葉で自分自身を一つの隔絶した、特別な存在だと思いこもうとしている。そんなこと出来やしないのに。同じことを続けていくことで自分を濃くしようとするのが逆効果だなんて気付きもしていない。馬鹿だよねえ、日常からの脱却を望んでいるつもりが泥沼に陥っているんだから。でもね俺はそれが愛しくてたまらないんだ。」

男の笑顔はひどく胡散臭かった。しかしそれでもその顔は余りに喜びに満ちていて、僕には眩しかった。それはかつて僕が唯一無二の友人に対して抱いたものと非常に似通っていた。僕のいる場所からは手も届かない彼らの非日常がうらやましい。

(日常を楽しめなんて彼らは言うけども、僕はここじゃないどこかへ行きたい。)

午後の光は穏やかだったが、弱くはなかった。

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