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怠惰


目を覚ましたときにはもうすでに太陽は昇りきっていた。正午少し前を指す時計の針を薄目で見つつ、寝転がったまま少し身体を伸ばす。布団も敷かずに眠ったものだからひどく背骨が痛い。首の関節がごきりと嫌な音を立てるのを聞かなかったことにして、俺はもう一度身体を丸めた。俺の隣の金髪は身じろぎさえせず、死んだように眠っている。本当に死んでるんじゃないかと少し心配になって(昨日あれだけの量を飲ませたのは俺だけれども)腹ばいに近付いてみると、残念なことにまだ生きていたらしく穏やかで酒臭い呼吸を繰り返していた。まだ目覚める気配は無い。つまらないなと心の中で呟いた俺の声は外の喧噪に消えた。三連休最後の祝日はどうやらレジャー日和のようだ。
昨日の夜、仕事が終わるのを見計らって迎えに行くと、約束していた訳でも無いのにシズちゃんは待っていたかのように俺を連れて歩き始めた。雨の匂いのする暑い夜だ。人々が皆、週末の楽しみを控えて家路へと急ぐ中俺たちだけがゆっくりと足を進めていた。のろのろとした足取りで隣にいる奴の存在を確かめながら歩く。シズちゃんの手が時々俺の手に触れて、俺の視線がシズちゃんのそれと出会ったりして。鈍くて、まるで明けきらない梅雨の、この空気みたいな交わり。声も立てずに笑うと、隣の肩が震えた。頭がゆっくりと腐敗していく。「好きだ」というこの一言は怠惰の感情とよく似ていると最近思うのだ。無くてはならないものじゃないし、ましてや捨ててもいいようなものなのにいつの間にか手放せなくなっていて、気付けば
依存している。夏のせいかもしれない。脳味噌が茹だって、その時俺は彼のことしか考えられなくなっていた。
道すがらコンビニに寄ってしこたま酒とつまみを買い込んで(俺が際限無くカゴに物を増やすもんだから彼はずっと渋い顔をしていた)彼の家に向かった。シズちゃんの部屋はやっぱり暑くて、入った瞬間に蒸れた空気に襲われた。「暑い」と彼に文句を言っても帰れとは言われなかった。ただシズちゃんも「暑いな」と言って俺の方を見ただけだった。喉がひどく渇いていた。玄関に靴を脱ぎ捨てて、畳にシズちゃんが俺の上にのし掛かる形で倒れ込む。わぁとふざけた悲鳴を上げるとにやりと俺の上にいる男は笑った。そのままの体制でしばらくの間じゃれあって、それから買ってきた酒を水の代わりに飲んだ。渇いた喉を潤すためにたまにキスをしたりもした。窓を開けても温い空気の
せいか動作のどれもこれもがゆっくりに思えた。シズちゃんがもう一度俺の上にやってきたときも、いつもの彼じゃないみたいに優しくて緩慢だった。夏のせいかもしれない。もしかすると雨の匂いがしたからかもしれない。ひどく穏やかで鈍い夜だった。

頭痛がしたので俺はもう一度目をつむった。朝日は酒の回った頭にはまだ早すぎる。畳の上で寝るとまた身体を痛めるぞと自分に言ってみたがもう動く気にもならない。薄く目を開くと、彼も目を開いているのが見えた。
「あと十五分。」
寝ぼけたように彼がそう言ったので、俺もまた眠ることにした。

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