[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
姿見
母の部屋には姿見があった。中学校へ上がるまで俺の身長がそれを越すことはなかったから相当に大きなものだったと思う。部屋の入り口の真正面にそれはあって、普段扉は開かれたままだからその前を通る度に自分の姿が映った。
ある時は笑顔で、ある時はぶすくれた顔で。そこに映る自分の顔を見て、「ああ泣いていたのか」なんて気付いたこともあった。
その鏡を母はいつだってぴかぴかに磨きあげて大事にしていて、それと同じように俺もそれを大切な存在だと感じていた。
しかしいつからだったろう。俺がその鏡を見ることをやめてしまったのは。確かにわかるのは金髪になった自分の格好はあの姿見では見ていないということだ。ということは高校へ上がる少し前からだろうか。いや、それよりきっともっと前に、俺は鏡を見ることが嫌になっていたんだ。自分の姿なんて見たくない。いなくなりたいと思っていたかもしれない。人並みはずれた力を持つ身体を見たくないと思い始めたのがいつかもわからない。
その頃、俺が一番見たくなかったのは自分の目だった。前髪の内側で、金を反射する目。その奥の淀みきった部分はきっと表面に浮かぶ激しいほどの感情のせいで他人には見えないだろうが、俺にははっきりと見えたから。俺は自分が嫌いだった。
だから、「化け物」と呼ばれたときはっとしたのだ。
お前は人間じゃないんだから。そう言って笑った男の姿は今も網膜に焼き付いて離れない。
「君と、周りの人間とじゃあ違いがあって当然じゃないか。」
さも当たり前、というようにあいつは俺を見た。何を馬鹿なことを言っているんだとでも言いたげな笑顔を浮かべて、俺だけを見つめていた。
「君はどうやったって君から逃れられないんだからさ。いい加減諦めなよ、シズちゃん!」
あいつにとっちゃその言葉はナイフと同じだったんだろう。傷つけるために心臓に突き立てられたその一言で、まさか俺が救われたとは思いもするまい。
(ああ、そうだった。俺は俺なんだ。)
頬には擦り傷、服はボロボロでところどころに破れが見られ、シャツの左胸部分は鋭利なナイフで綺麗に切られてしまっている。擦りむいた手のひらで扉を開けて俺が再びその姿見の前に立ったとき、そこにあったのはそんな自分の姿だった。
ある時は笑顔で、ある時はぶすくれた顔で。そこに映る自分の顔を見て、「ああ泣いていたのか」なんて気付いたこともあった。
その鏡を母はいつだってぴかぴかに磨きあげて大事にしていて、それと同じように俺もそれを大切な存在だと感じていた。
しかしいつからだったろう。俺がその鏡を見ることをやめてしまったのは。確かにわかるのは金髪になった自分の格好はあの姿見では見ていないということだ。ということは高校へ上がる少し前からだろうか。いや、それよりきっともっと前に、俺は鏡を見ることが嫌になっていたんだ。自分の姿なんて見たくない。いなくなりたいと思っていたかもしれない。人並みはずれた力を持つ身体を見たくないと思い始めたのがいつかもわからない。
その頃、俺が一番見たくなかったのは自分の目だった。前髪の内側で、金を反射する目。その奥の淀みきった部分はきっと表面に浮かぶ激しいほどの感情のせいで他人には見えないだろうが、俺にははっきりと見えたから。俺は自分が嫌いだった。
だから、「化け物」と呼ばれたときはっとしたのだ。
お前は人間じゃないんだから。そう言って笑った男の姿は今も網膜に焼き付いて離れない。
「君と、周りの人間とじゃあ違いがあって当然じゃないか。」
さも当たり前、というようにあいつは俺を見た。何を馬鹿なことを言っているんだとでも言いたげな笑顔を浮かべて、俺だけを見つめていた。
「君はどうやったって君から逃れられないんだからさ。いい加減諦めなよ、シズちゃん!」
あいつにとっちゃその言葉はナイフと同じだったんだろう。傷つけるために心臓に突き立てられたその一言で、まさか俺が救われたとは思いもするまい。
(ああ、そうだった。俺は俺なんだ。)
頬には擦り傷、服はボロボロでところどころに破れが見られ、シャツの左胸部分は鋭利なナイフで綺麗に切られてしまっている。擦りむいた手のひらで扉を開けて俺が再びその姿見の前に立ったとき、そこにあったのはそんな自分の姿だった。
PR
COMMENT
