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努力
※新羅と臨也


臨也の手が案外きれいなものではないことを知る人はどれほどいるだろうか。比喩的な意味も、具体的な意味も含めだ。
「君って努力を他人に見せないタイプの人間だと思ってたよ。」
「ふうん、新羅って俺をそんな風に見てたんだ。照れるね。だけど、それは俺を買いかぶりすぎだよ。俺はそもそも努力なんてしないし、この作業だって必要なことをやっているまでさ。」
臨也は目を本に落としたまま僕にそう言った。そのページにはびっしりと知らない文字が並んでいて、私にはそれが暗号のように見えた。意味を成さない羅列を目の前の男を真似して追ってみるが、段々蓄積していくその文字が嵩を増していくのに耐えられなくなって私は席を立った。
腹を刺されたとどこか嬉しそうな顔をして一昨日の夜現れたこの男は、まだ犯人が捕まっていないなんてもっともな理由をつけて僕と彼女の愛の巣に居座っている。確かにその傷は浅いものでは無かったが、わざわざここに入院するほどのものじゃない。保護してもらうならその筋の人のところへ行けばいいのにと俺が口にしたのが昨日。そしてこの男の依頼で愛する彼女が二つ向こうの県まで走っていったのが今朝。天賦の才って誰にでもあるもんだねと皮肉って言ってやろうかと思ったが、そんなことをすれば次の依頼で彼女は海を越える羽目になりそうだから私は口を噤んだ。
彼女もいないし、(臨也が手を回したのか)今日くるはずだった患者も来ない。外にでるような趣味も無い俺はすっかり手持ち無沙汰になって、仕方なく唯一の入院患者の相手をすることにしたのだった。
臨也の手は案外きれいではない。指先にはひどく年季の入ったペンだこがある。手のひらにはナイフを握る人間特有の跡がある。努力なんてしないなんてこれで言うのだから笑いぐさだ。
(素直に自分がふつうの人間だって認めればいいのに。)

「ねえ、君ってさあ、」
マグカップを持って俺がベッドの側へ戻っても彼は文字列から目線をはずそうとはしなかった。俺は黙り込む。この続きはきっと彼自身わかっているだろうから言わない方がいいだろう。

(ばけものになりたいんだろう。)

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