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電話を切ってすぐ俺は駆けだした。風呂上がりの濡れたかみのまま、靴下を履きもせずに目に付いた靴を引っかけて。Tシャツだってもう何年も寝間着として使っているよれよれのものなのも忘れて俺は家から飛び出していた。
夜の何時過ぎだったかは覚えていない。もうすぐ明日になるねと電話越しにあいつがいったことだけは覚えている。真っ暗な道を俺は行く。息を弾ませて、周りの目なんか気にする必要もなかった。
こんなことになったのは何もかもあいつが悪い。俺はさっきの電話内容を思い出す。家に帰ってきて、飯食って、風呂に入って、それからぼんやりテレビなんか見ながら扇風機に当たっているときにあいつが電話を掛けてきた。それ自体は珍しいことじゃない。あいつは俺の都合のいい時間を見越して時折、繁にじゃないがこうして電話を掛けてくるようになった。俺とあいつがこういう関係になってからのことだ。恋人、なんて呼ぶとあいつは少し困ったような顔をするのだが、時々こうして電話をして、お互いの声を聞いて、それから顔が見たくなって、直接手に触れたくなったりして、次会ったときにはどんな話をしようかなんて考える関係を俺は恋人以外に知らないからそう呼ぶことにしている。口に出したことなんて無いが、俺はきっとあいつのことが好きで、あいつも俺のことが好きなんだと思う。俺たちは高校時代からずうっとお互いばかり見つめすぎていて、あんまりにもこういった関係性に慣れていない。
だからだろうか。さっき臨也の、あんな声が聞こえたのは。
息苦しい。それでも脚は止まらない。俺の家の最寄り駅から新宿までは何分だっけ。電車に乗るのももどかしい。あいつはドアを開けて待っているだろう。何とも言えないような、自分自身でも何と言っていいかわからないみたいな顔をして。俺たちは長い時間を共にしてきたのに、それでもまだお互いに言っていない、言えていない言葉がある。
濡れた髪がシャツを濡らしている。もしかすると汗で濡れているのかもしれない。家の電気を消し忘れたことだとか今の格好だとか心配ごとはいろいろあったけど、すべては心臓の音が消してしまった。俺の頭の中に残ったのはただ一言。あいつの言葉だけ。

「今、君に会いたい。」

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