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武器

※即興二次小説制限時間30分で書いたやつ。お題「最強の武器」




「馬鹿だなぁ寿一は」
呆れたような声で新開はそう言い、目の前にいる男を見る。福富は黙ってそちらを見返して、憮然とした表情をしている。本当に、と前の台詞を強めるように新開が続けると彼の眉間の皺は更に深くなった。自分が何について言われているかわかっていないような表情だ。新開は呆れてちょっと肩を竦めて言葉を続けた。
「寿一ってさぁ、本当に自分のことわかってないよ」
「…どういうことだ」
「そのままの意味だよ。折角それだけの武器持ってるのに一つも使い方をわかってない」
新開が軽く首を振る。福富は納得いかないとでも言いたげにじっと新開を見詰めて、どういうことだと繰り返した。立ち上がりかける親友をテーブル越しにまぁまぁと止めながら新開は苦笑を滲ませる。普段あれだけ高校生らしくないような落ち着きを見せるくせにこういうところは子供っぽい。珍しく堪え性の無いような様子で苛立ちを隠そうともしないで、福富は厳しい顔をして彼の前に座っている。手に持った空のペットボトルをぼこぼこと音を立てて弄んでいる。ひどく居心地が悪そうだ。そういえば中学のときもいつだってこいつはこういった話題になるとどこかに逃げていってしまっていたなとふと思い出して、新開は何だか一人ちょっとだけにやけてしまう。親友の成長が微笑ましいようなくすぐったいような、それでいてどこか困ってしまうような気分だ。福富は新開のその表情を見て、少しだけまた苦い顔をした。速く続きを、とでも言いたげな視線に促される。やれやれ、と言いたくなるのを口元に笑みを浮かべるだけで止めて、新開はまた口を開いた。

「まず、アイツはお前のことが好きだ」
新開は断定するようにそう言った。福富がそれを否定しようとする前に言葉を続ける。
「好きじゃないわけが無いだろ。だってそうでなけりゃ毎日毎日あんなに一緒には…まぁそれはいいとして、前提としてアイツはお前のことが好きなんだ。ここまではいいだろ。それじゃあこれからアイツをどう落としていくか、って話になるんだけどさ、そもそもそういうことはお前は考えなくてもいいんだよ、寿一。小難しいことは考えなくていい。お前はお前のままでいいし、余計なことは一つもしなくていいんだ」
だってそれがお前の最強の武器だ。お前は何もしなくてもあいつにとっての一番の弱点だし、それに何よりお前が一言「そう」だと言えばアイツは何にも出来なくなるんだ。
「いいか寿一。おめさんは何も考えるな」
以上、俺のアドバイス終わり。新開がそう言って肩を竦めると、福富はひどく困ったような顔をして彼を見た。
「終わりか」
「終わりだ」
「…それ以外は」
「無いな」
「…」
福富は黙り込んで目を伏せている。こいつに相談するんじゃなかったとでも思っているんだろうか。でも誰に聞いたって同じ答えが返ってきたはずだ、と新開は内心思いながらその姿を眺めていた。答えはすでに出ているのにこいつはずっと立ち止まっているだけなのだ。毎日毎日カップルかそれとも夫婦かとでも言うくらい寮でも学校でも部活中でも一緒にいるくせに、それにあいつのことなら当然俺が一番わかっているという顔をしているくせに、こんなところばっかりはわかっていない。
不思議な奴だ、と新開は首を傾げて彼を見る。
「なぁ寿一、やるなら早くした方がいいんじゃねえの」
今日やるって決めたんだろ。新開がそう言うと福富は顔を上げる。気の進まない様子の彼に、さっきと同じように、「心配しなくていい」と言ってやるとそれから新開はこう言った。

「代わりに靖友に電話してやろうか?」

福富は黙り込んでいたが、それからすぐに「自分で探す」と言って立ち上がった。どうやら彼は自分の武器をなんとなく、理解したようだ。


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